【関大社会安全学部 リレーコラム】複合的に生じる災害に備えを

世界各地で新型コロナウィルスが猛威を振るっており、感染拡大がとどまるところを知りません。今月16日には、わが国でも全都道府県に緊急事態宣言が発出される事態となりました。日ごとに感染者数が増え、収束の見通しも全く立たない状況です。
このような将来を見通せない「不確実な」状況下では、多くの人が、自分は感染しているのではないか、人にうつしてしまうのではないかといったように疑心暗鬼になり、不安を感じるようになります。あるいは逆に、自分は決して感染しないと超楽観的になったり、時には根拠のないデマが拡散したりします。
こういった「不確実な」状況下では、情報の精度を高めていくことがとても重要ですが、そのためには、客観的な科学データの収集と分析が必要不可欠です。「正しく恐れよ」と呼び掛けても、「正しい」とされる情報がなければ誰も「正しい」判断はできませんので、客観的な科学データを公表することも必要です。
例えば、PCR検査の数が世界的にも少なく感染者数が低く見積られているという指摘があります。現時点で感染の有無がPCR検査でしか判定できないのであれば、検査数を増やして、科学データを蓄積するとともに、感染者数の現状をより正確に把握する必要があります。精度の問題もありますが、簡易に検査できる方法の検討も必要です。
熊本県熊本地方を中心に発生した地震から4年の歳月がたちました。今、新型コロナウイルスの感染拡大で社会全体が混乱している中、もしこのような地震が発生すればどのような事態になるか、例えば、避難所に人々をどのように誘導するのか、避難所で3密(密閉、密接、密集)を避けることができるのかなど、現実に起こりうるシナリオとして複合的に生じる災害に対しても備えておかなければなりません。
(関西大社会安全学部准教授 小山倫史)(2020-04-20・大阪夕刊・夕刊特集掲載)