東日本大震災緊急シンポジウム:林能成 准教授の講演概要を掲載しました

3/30(水)に関西大学高槻ミューズキャンパスで開催する「東日本大震災に関するシンポジウム」におけるパネリストからの講演概要(各テーマごと)を掲載します。
講演概要は開催当日までに1日1テーマを予定に更新していきます。

⑤ 「 地震のメカニズムと特性 」 林能成 准教授(2011年4月1日着任予定)

東北地方太平洋沖地震は日本の地震観測史上最大のマグニチュード9.0という超巨大地震である。世界的に見ても、近代的地震観測がはじまってからマグニチュード9を超える地震は5つしか起きていない。日本では多くの古文書に残された被害記録から過去の地震を探る歴史地震学も盛んだが、歴史 を飛鳥時代までさかのぼっても今回の地震に匹敵する規模の地震は知られていなかった。過去に類をみない規模の大地震が起き、これまでの経験とは次 元の異なる災害対応に迫られている。
地震および地殻変動観測から推定された地震発生源(=震源断層)は、太平洋プレートの上面が長さ500km×幅200kmという広大な範囲で最大 で20m以上ずれて破壊されたと見積もられている。この断層面から地震波が放出され、建物などに被害が出る震度5弱以上の揺れは北は青森県から南 は静岡県までの広いエリアに及んだ。今回の震災では津波被害が極めて大きいが、地震の揺れとそれによる被害も決して小さなものではなかった。また、震源断層およびその周辺領域では、マグニチュード5を超える大きな余震も続発し、被災地ではひっきりなしに揺れるような状況になっている。
地下の震源断層のずれは東北地方太平洋沖の海底を隆起させて津波の発生源になるとともに、東北地方を中心に日本列島の地面を最大で5メートルも変形させた。これにより日本列島に多数存在する活断層の一部に新たな力がかかり長野県や静岡県では誘発されたと思われるマグニチュード6級(最大震 度6強)の地震が起きた。超巨大地震は隣接したプレート境界やプレート内部にマグニチュード8を超える大地震を誘発することもあり、2004年に 起きたスマトラ島沖マグニチュード9.3の地震以降インドネシアでは連続して大きな地震が発生している。
しかし1960年チリ地震(M9.5)、 2010年チリ地震(M8.8)では大地震の連続発生はなく、日本列島の地震活動がこの先どのような経過をたどるのかを予測するのは現在の科学的 知見では難しい。
【その他の講演概要】
① 「 原子力発電所の被災とその影響 」小澤守 教授
② 「 巨大複合災害としての東北・関東大震災 」 河田惠昭 教授
③ 「 マクロ経済への影響と経済復興 」 永松伸吾 准教授
④ 「 ライフラインの被害とその影響 」 安部誠治 教授