東日本大震災緊急シンポジウム:小澤守 教授の講演概要を掲載しました

3/30(水)に関西大学高槻ミューズキャンパスで開催する「東日本大震災に関するシンポジウム」におけるパネリストからの報告概要(各テーマごと)を掲載します。
報告概要は開催当日までに1日1テーマを予定に更新していきます。

① 「 原子力発電所の被災とその影響 」 小澤守 教授

死者、行方不明者合わせて2万人を超える未曽有の災害となった今回の震災が阪神淡路大震災と決定的に異なるのは、予想をはるかに超える津波の発生であろう。
津波の来襲は甚大な人的被害をもたらしただけでなく、基盤インフラとしての原子力発電所、特に福島第1発電所において完全な電源喪失状態,引き続く冷却機能喪失状態をもたらしたことである。
これによって4基の原子炉が設計基準事故をはるかに超えるシビアアクシデント状態に陥り、半径20km圏内の住民避難までをも引き起こしてしまった。
運転中の3基のみならず定期点検中の4号機においてさえもこのようなシビアアクシデント状態に陥ったことは、かつて原子力開発を積極的に進めてきた欧米や日本において初めての経験であり、原子力政策の大きな転換点となること間違いない。
原発の安全は、止める、冷やす、閉じ込めるを基本として組み立てられてきたが、核分裂固有の崩壊熱の存在と電源の全喪失、非常用インフラの機能停止によって、止める、冷やすが確保されず、閉じ込めることさえできなかったことは、原子力の安全性は今回のような未曽有の大災害から見れば脆弱な基礎に基づいた「想定安全」であったといえる。
しかし一方で、どこまでの基準に基づいて安全システムを構築したらよいのか、その判断は極めて難しい問題と言わざるをえない。