緊急シンポジウムを開催しました(更新)

6月19日に高槻ミューズキャンパスで緊急シンポジウム
「2010年宮崎県口蹄疫災害を考える~「経済災害」と社会の安全~」を開催しました。

このシンポジウムは、今年4月以降、宮崎県を中心とする口蹄疫の爆発的な感染により、

畜産農家への被害が深刻さを増していることを受け、防災・減災や危機管理を多方面から探求する本学社会安全学部が緊急企画したものです。

当日は、永松伸吾准教授の司会のもと、口蹄疫問題に積極的に取り組んでいる宮崎県会議員の武井俊輔氏や宮崎県大阪事務所流通課長の柄本康氏を講師に迎え、現地での深刻な実態と、その背景にある社会や制度の問題に目を向け議論を展開しました。

発言要旨

【永松准教授】 「経済災害」としての口蹄疫
・「経済災害」には二つの意味がある。一つは、一般の災害は社会基盤・住宅・いのち・経済基盤などに被害をもたらす。しかし口蹄疫は経済基盤にしか被害をもたらさないという意味での特殊性。
・もう一つは、経済活動が高度化していくなかでリスクが増大しているという意味。例えば昭和55年から平成19年までの間で、宮崎県の養豚農家一件あたりの飼育頭数は76.7頭から1386頭に飛躍的に増加した。

【高鳥毛教授】 口蹄疫とは何か
・平成16年に口蹄疫の完全排除は無理と考えられ、「口蹄疫に関する特定家畜伝染病予防指針」が作られた。
・家畜伝染病対策は「牛疫」との戦いの中で確立されてきた。
・口蹄疫の防疫の基本は「封じ込め」にある。ワクチンによる対策は採用されていない。
・但し、今日のように人・モノの移動が激しくなった現在、殺処分による封じ込めという対策が疑問も提起されている。

【武井県会議員】 「口蹄疫」の震源地から
・家畜伝染病予防法は昭和26年に制定された古い法律。防疫対策の多くを農家の自己責任にしているところが実情と乖離している。
・移動制限地域では、多くの農家が外出もままならない状況。ストレスを抱えて電話してくる人もいるが、むしろまったく連絡がない農家を心配している。
・宮崎県の職員はこれまで一人当たり平均7回から8回程度殺処分に動員されている。殺すのは獣医がやるが、それを補助したり死骸を運んだりする仕事。慣れない仕事でけがをする職員が多数。精神的ストレスも大きいようだ。
・口蹄疫の被害は家畜農家だけではない。畜産はすそ野が広く、たとえば人口授精師、削蹄師などは全く仕事がないうえに、政府による補償も受けられない。
・非常事態宣言によって集会なども自粛した結果、観光客も減って経済活動も低下した。
・風評被害が深刻。隣接する豊後大野市がすべての市の施設で宮崎県民の利用を禁止する対応をとった。きわめて残念。

【柄本氏】 宮崎の畜産の概要と流通
・宮崎県は肉用牛の出荷頭数で全国3位、豚が2位など畜産王国である。
・肉用子牛が三重や兵庫に多く出荷され、そこで肥育されている。成牛も近畿に多数出荷されている。
・口蹄疫の影響が出始めている。4月から5月にかけて肉用子牛の取引が大幅に落ち込んでいる。
・風評被害も深刻。観光業では宿泊客のキャンセルも相次いでいる。宮崎産の野菜まで値切られるケースも。

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