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> コラム:第11号(2008年)
● 少子化社会とその影響
「1.57ショック」という言葉で、わが国の少子化に対する危機感が取り沙汰されてから、早や18年が過ぎました。この間、育児休業制度の導入や児童手当の対象年齢の拡大、さらには保育所の待機児ゼロ作戦など、数々の少子化対策は実施されたものの、日本社会の少子化傾向は依然として変わっていません。 結婚・出産後も仕事を続けたい女性は増えているものの、第一子出産を機に女性の70%が離職し、一方の男性で育児休業を取得した人は1000人のうち6人程度であるなど、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境にはいたっていないのが現実です。 夫婦が理想の子ども数を持てない理由として、「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」、「育児の心理的・肉体的負担に耐えられない」、「子どもがのびのび育つ社会環境ではない」という社会全体として解決するに値する理由が上位に挙げられています。 少子高齢化の進行に伴う労働人口の急減により、成長力の大幅低下や社会保障費用の現役世代への負担急増が懸念される中、有効な対処策の1つとして、女性の労働力率を高めていくことが求められており、なかでも女性が安心して出産・育児を行いつつ、働き続けられる環境整備が必要です。
● 2万人を超えた待機児童数、求められる多様なサービス
保育所に入所するための申込書が提出され、かつ入所要件に該当するものであって、現に保育所に入所していない児童を「待機児童」(厚生労働省の定義)と呼びますが、この待機児童数は全国に19,550人います。東京都ではこの数が5,000人を超えるなど、大都市部ほど「待機児童」は多いこともひとつの特徴です。 また、両親の勤務形態の多様化にともなって、長時間や夜間保育を希望する事例が増え、11時間の保育を基本とする従来の認可保育園では対応できないなど、いわゆる保育の需要と供給のミスマッチも生じてきています。 さらに、核家族化が一段と進行し、若い世代の中では子育て不安や困難を抱える世帯も増えてきています。つまり、専業主婦家庭の一時預かりのニーズなど、さまざまな需要にこたえていかざるをえない状況になってきています。これまでは共働き世帯に限っていた保育サービスを、必要性に応じて普遍的に供給することが求められているのです。
● 量の拡大と質の向上が必要
就労形態の多様化や利用者ニーズにきめ細かく応えるには、保育所を増やし、もっとサービスの質を向上させる必要があります。しかしながら、現行の保育所は官がサービスや料金、需要等をコントロールする、いわば「官製市場」で、さらに、利用者による自由な選択を妨げ、利用する保育施設の種類で利用者負担額が異なり、その結果、利用者間に不公平感をももたらしています。
なぜ、保育所定員の量的拡大が進まないのでしょうか?その背景には保育分野の大半を占める認可・公立保育園に出されている補助金の存在があります。認可保育園の運営経費の8割に税金が投入され、残り2割が保護者負担です。この認可保育園に手厚すぎる補助金構造が続く限り、財政難のなか、各自治体は、認可・公立保育園を新たに設置することは困難となる。そこで、待機児解消のため規制緩和を行い、株式会社にも保育園運営も認めてきました。しかし、圧倒的な補助金の差によって競争条件が同一でないため、民間企業の参入状況は全国ベースでわずか4%に過ぎません。 また、投入される補助金の差額により、手厚い公的補助を受ける認可保育所の料金は月額平均2万円程度で済みますが、民間企業が経営する保育所では6〜7万円で、運よく認可保育所に入れた人だけが手厚い補助を受けられることになります。
● どうすればサービス向上が進むのか
また、依然として残る「措置制度」も問題です。現行制度は市町村が入所する施設を割り当てるいわゆる「措置制度」から完全に脱却できておらず、利用者が保育所を複数、選択して市町村に申し込みを行う「利用者選択方式」が採用されるにとどまっています。このため、利用者の自由な選択に基づく「契約」方式とは程遠い状況にあります。 さらに認可保育所に入れるのは「保育に欠ける」子に限定され、「保育に欠けるか否か」を判断するのは市区町村です。「保育に欠ける」とは昭和22年に出来た児童福祉法で規定され、両親が共に昼間働いていたり、妊娠・病気療養中で児童の面倒を見ることができず、かつ他に児童の面倒を見る親族などがいない状況をさします。戦後、60年以上も経過し、家族や子育てをめぐる状況は大きく変わっているのに、依然として古い考え方が残ってるのです。 こうした問題を解決するには、2000年に制度化された高齢者の公的介護保険制度と同様、利用者が保育を希望する認可保育所に直接、入園申請を行い、利用者と保育所が直接契約できる「直接契約方式」を導入すべきだと思います。 つまり、市町村は就学前の児童を持つすべての家庭を対象に、利用者の保育の緊急度や必要とされる保育サービス量を定める「要保育度」を判断し、利用者は希望する保育所に直接、申し込み、当該保育所が利用者の「要保育度」に基づいて、審査・決定を行い、利用者と保育所が契約を行う仕組みに変えていくのです。 この結果、公的補助の手厚い認可保育所に比べて不利な条件を強いられていた認可外保育所も、競争条件が同一化し、さらに、「認可」、「認可外」といった保育所の区分、「公立」、「社会福祉法人」、「株式会社」といった経営主体の差に関係なく、多様な事業者が参入し、保育園側にも利用者に「選ばれる」という意識が芽生え、サービス向上へのインセンティブが働くことにつながります。官民事業者のイコールフッティングの結果、現行制度ではなかなか進まない病時保育や夜間保育、延長保育といったサービスの競争も進んでいくと考えられます。
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