教員紹介

教員の著書

教員の著書一覧

美容整形というコミュニケーション
社会規範と自己満足を超えて

谷本 奈穂 他著

(花伝社/2018年6月刊/256頁)

美容整形というコミュニケーション 社会規範と自己満足を超えて

内容紹介

人は「あるがまま」の姿でいることができる。太っていても痩せていても、髪が縮れ毛でも直毛でも、まぶたが一重であっても二重であっても問題はない。けれど、人々は髪にパーマを当てたり、ダイエットで体型を変えたり、厚底の靴を履いたりする。時に美容外科手術や美容医療にまで手を伸ばす。

なぜなのか。それは、私たちが美容社会に煽られ、自由を奪われているからである。美容外科手術の多くは一重まぶたを二重まぶたにするのだが、その逆はほとんどないことから分かるように、目指すべき身体は社会によって相当に規格化されている。

しかし同時に外見を変えることで、自分を変えることもできる。「どのような身体に生まれてきたか・・・・・・・」だけではなく、ダイエットやトレーニングで引き締まった体型になったり、髪型を変えたりして「どのような身体に変えていくのか・・・・・・・」という「選択」も、自分自身を作る要素となる。

本書は、「規格化」と「自由」議論をふまえつつ、より日常生活によりそった調査を行い、美容整形の議論をより進化させることを試みた。前著(『美容整形と化粧の社会学』新曜社)で、美容整形経験者たちが「コンプレックスを解消したいから」「異性にモテたいから」ではなく、あくまで「自己満足のため」に整形を受けると語ることを発見したが、その「自己満足の議論」をさらに深めたのが本書である。そもそも、彼女たちが美容整形へと背中を押された「きっかけ」は、いったい何なのであろうか。

なお、中日新聞・東京新聞(2018年8月5日)、ダ・ヴィンチニュース(web)などに書評が掲載されました。

著者からのひとこと

本書ではさまざまな調査手法を組み合わせています。

まず、いわゆる「量的調査」として調査票調査(アンケート)を2003~2013年にかけて合計4225名に行なっています。同時に、いわゆる「質的調査」として、インタビュー調査を計35名(プレインタビューを含めると37名)に対して行なっています。どちらかに偏ることなく、調査票調査とインタビューを組み合わせることで、より美容整形の実態に迫りたかったからです。

例えば、インタビュー調査から美容整形経験者が「コンプレックスを感じていた」と語ったとしましょう。しかし非経験者もコンプレックスを感じているかもしれません。実は、「美容整形経験と何が結びつくか」を見いだすためには、非経験者と比較しなければならないはずなのです。その点、調査票調査は力を発揮します。とはいえ、数字からは見えにくくなっているリアリティやニュアンスも見ていかなければなりません。これらは、インタビィーを通じて経験者たちの「生の言葉」に寄り添うことで、見えてくるものです。

さらに、本書ではメディア分析も行なっています。広告や雑誌などの内容を、テキストマイニングという手法や、より質的な手法の両方を用いて明らかにしています。

大事なのは、研究対象に迫る際に、どうやったらよりよく調べることができるかを考えることだと思います。本書の場合、様々な方法論を組み合わせることが最良だと考えました。

目次

  1. はじめに
  2. 第一部 「メディアにみる社会規範――広告と美容雑誌」
    1. 第1章 「美容の科学、自然との共犯――化粧品広告と美容雑誌の分析」
    2. 第2章 「老いという病、肌本来という幻想——ミドルエイジ女性向け雑誌の分析」
    3. 第3章 「女性の外見に関する社会規範——美魔女を事例に」
  3. 第二部 「美容医療を受ける人々――動機・特徴・コミュニケーション」
    1. 第4章 「自己満足の発見と二つの問い」
    2. 第5章 「美容医療を望む人々の特徴——自分・他者・社会との関連から」
    3. 第6章 「他者とは誰か:女性同士のネットワーク」
  1. 第三部 「美容医療を施す人々の論理」
    1. 第7章 「医師とクライアント」
    2. 第8章 「医者と医師――専門分野の壁」
  2. おわりに

このページの先頭へ