みなさんは博覧会に行ったことがありますか。本書は、10名の仲間たちとともに、地方博覧会について考察したものです。主として歴史社会学と呼ばれる分野の手法を用いています。
目次を見てもらえば分かるように、三部構成を取っています。第一部では、消費をめぐる博覧会のさまざまな機能・逆機能について考察し、第二部では、宗教文化、ジェンダー、サブカルチャーなど、さまざまな文化現象に対する博覧会のコミットメントやそのポリティクスについて、検討しています。そして第三部では、ナショナリティとローカリティの問題に焦点を当てながら、国民的なアイデンティティや植民地・地方への視線と博覧会の関わりについて考えています。 ……などと書くと、小難しそうに見えますが、実際には、広告と博覧会の関係、百貨店の北海道物産、コンパニオン、アニメ博覧会など、興味深いテーマの論考が集まっています。ご一読いただければ幸いです。
なお2009年10月23日に、京都大学教育学部のGCOEの研究会にて合評会が行われる予定です。
これまで博覧会の研究は、主として万国博覧会(万博)を中心としたものでした。博覧会と一口に言っても、実は別物で、万博とは、博覧会国際事務局BIEが認定する万国博覧会だけを指します。
そういった万博や国家レベルの博覧会に比べて、本書が扱っている地方博覧会は、規模はずっと小さいものの、圧倒的に多く開催されてきました。ですが、それらが考察の対象になることはこれまで少なかったのです。大きな規模の万博から、こうした地方レベルの博覧会に、注目点を移すことで、地方で消費された、人々のさまざまな体験を、浮き彫りにできるのではないでしょうか。 「あまり注目されてこなかったものに、光を当てる」ということは、学問の楽しさの一つでありましょう。知っているようで実は知られていなかったことを、再発見するおもしろさを味わっていただければ嬉しいです。