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異文化コミュニケーション論―グローバル・マインドとローカル・アフェクト

八島智子・久保田真弓 編著

(松柏社/2012年10月20日刊行/320頁)

異文化コミュニケーション論―グローバル・マインドとローカル・アフェクト

内容紹介

本書は、文化背景の異なる人々のコミュニケーションについて考える本です。グローバリゼーションが進展し、人や物が多様に交差し出会う世界では、グローバル・マインドとローカル・アフェクトの両方を兼ね備えた人材が必要であることを提言しています。グローバル・マインドとは、多文化社会で起きるさまざまな現象をマクロの視点から見て理解し、分析できる認知的な側面での能力です。一方、ローカル・アフェクトとは、自分がいる場で人々の問題を感得し対応しようとする情動の面での能力です。本書では、グローバル・マインドとローカル・アフェクトの両方を異文化コンピテンスとして捉え、今必要とされる異文化コンピテンスとは、どのようなものなのか過去の異文化コミュニケーション研究の知見も活かしながら吟味し、新しい提言をしています。

 

本書の特徴として実践を重んじる立場から、アクティビティ、コラム、ワンポイント・スタディ、ディスカッションを設け、本書で理解したことを吟味する手立てを提供していることが挙げられます。これらを利用して考えながら読むと一層理解しやすいでしょう。

八代京子先生による書評があります。異文化コミュニケーション学会編集『異文化コミュニケーション』18号, 2015(印刷中)。

著者からのひとこと

本書を読んで、単に国籍、民族、ジェンダー、地域、年齢、性的志向などが違うからということで安易に自分と他者の間に線引きをするのではなく、いつどこでどのような状況のときに線引きをしてしまう自分があるのかに気づいてほしいと願っています。自分と他者とのコミュニケーションは、相手との関係性の中で刻々とダイナミックに動いている現象であり、それにより「文化」も作られているものなのです。しかし、このように単純には捉えきれない現象のはずなのですが、「外人だから」「女だから」「障碍者」だからと決めつけ、相手と固定的な関係でしかコミュニケーションを図ろうとしない人の多いことでしょう。なぜ、そのようなことになってしまうのか、本書を通して考えてみましょう。

目次

  1. 序章 グローバリゼーションと多文化社会を生きる力
    1. グローバリゼーションとグローバル・マインド
    2. 多文化化する日本とローカル・アフェクト
    3. 多文化社会を生きる力=コミュニケーションの力
    4. 研究分野としての「異文化コミュニケーション」
    5. 本書の構成と各章の内容
    6. グローバル・マインド、ローカル・アフェクトと異文化コンピテンス
  2. 第1章 コミニュケーションとサイン
    1. 1 コミニュケーションの成功と失敗
    2. 2 情報通信技術とコミニュケーション分析
    3. 3 コミニュケーションの特質
    4. 4 進化から探る人間のコミニュケーション
    5. 5 コミニュケーションの捉えなおし
  3. 第2章 文化について考える
    1. Ⅰ文化の共有・継承、変化:プロセスとしての文化
    2. ・1 文化的実践への参加と文化の共有・継承・変化
    3. ・2 規範意識としての文化
    4. ・3 スキーマ・スクリプトとしての文化
    5. ・4 儀式的コミニュケーションとしての文化
    6. ・5 道具としての文化
    7. Ⅱ価値観や行動様式の文化比較
    8. ・1 価値観と文化クラッシュ
    9. ・2 文化と価値観
    10. Ⅲグローバル化と変容する文化
    11. ・1 新たなコミュニティの文化
    12. ・2 文化とパワー
  4. 第3章 言語によるコミュニケーション
    1. 1 言語と認識
    2. 2 人称代名詞と対人コミニュケーション
    3. 3 コミニュケーション・スタイル
    4. 4 コミニュケーションの調整とコード・スイッチング
    5. 5 言語とラベル:人をなんと呼ぶか
    6. 6 多言語使用と言語政策
  5. 第4章 非言語コミュニケーション
    1. Ⅰ非言語コミニュケーションの要素
    2. ・1 非言語コードの分類
    3. ・2 非言語コミニュケーション分類の見方
    4. ・3 非言語コード
    5. ・4 ネット社会における非言語コードの解釈
    6. Ⅱ 非言語コミニュケーションの特徴と言語との関係
    7. ・1 非言語コミニュケーションの特徴
    8. ・2 言語メッセージと非言語メッセージの関係
    9. ・3 ダイナミックなコミニュケーション
    10. ・4 非言語コミニュケーションとサインとの関係
  6. 第5章 アイデンティティとコミュニケーション
    1. 1 アイデンティティとコミニュケーション
    2. 2 マルチプル・アイデンティティ
    3. 3 ナショナル・アイデンティティ
    4. 4 人種アイデンティティと民族的アイデンティティ
    5. 5 民族的アイデンティティの発達過程
    6. 6 選べるアイデンティティ、選べないアイデンティティ
    7. 7 文化的自己とアイデンティティ
    8. 8 言語とアイデンティティ
    9. 9 グローバル化と複雑化するアイデンティティ
  1. 第6章 メディアでつくられる文化
    1. 1 メディア・リテラシー
    2. 2 メディアとステレオタイプ
    3. 3 広告が作り出す現実
    4. 4 テレビCMで好まれる外国イメージ
    5. 5 テレビ番組が作る「異文化」
    6. 6 新たな文化を生み出せるメディア
    7. 7 言語と絵の融合表現:マンガ文化
    8. 8 デジタル化の進化と「アニメ」:ディズニーとポケモン
  2. 第7章 グローバル化する世界の異文化接触
    1. 1 異文化への移動と心理
    2. 2 異文化ストレス
    3. 3 異文化接触の多様なモデル
    4. 4 異文化への移動とアイデンティティ交渉
    5. 5 日本国内で出会う多文化
  3. 第8章 コミュニケーションの阻害要因
    1. 1 「皆同じ」という前提
    2. 2 ステレオタイプ
    3. 3 偏見
    4. 4 差別的行為
    5. 5 エスノセントリズム(自民族中心主義、自文化中心主義)
    6. 6 評価的な態度と極度の不安
    7. 7 言語・非言語解釈の違い
    8. 8 暗示的な(インプリシット)コミニュケーション
    9. 9 差別的まなざし
  4. 第9章 多文化とうまく付き合うために
    1. 1 グローバル・マインドとローカル・アフェクトとしての異文化コンピテンス
    2. 2 グローバル・マインド
    3. 3 ローカル・ アフェクト
    4. 4 文化の問答
    5. 5異文化コンピテンスに関する問答
    6. 6 異文化間コンピテンスは、どのように訓練できるのか
    7. 7グローバリゼーションの時代に備えて
  5. 引用
  6. 参考文献
  7. 人名索引
  8. 事項索引

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