関西大学 人間健康学部

講演会・シンポジウム等Seminer

「すこやか教養講座(第4期)」の第4回を開催いたしました。

  • ■日時

2012年2月25日(土)に、すこやか教養講座(第4期)の第4回を開催いたしました。

講師:関西大学人間健康学部教授 岡田忠克
テーマ:「子どもの貧困について考える」

この冬は、インフルエンザ等の流行で、子どもが病院にかかることが多くなっています。日本の
医療制度では、子どもが医療を受けるには、親が国民健康保険料等を支払っていることが前
提条件になっています。ところが近年、親が国民健康保険料を支払えないために、病院に行け
ない、医師の処方する薬をもらえない子どもたちが増えています。 

岡田先生からは、医療面だけでなく、親の苦しい経済状況が子どもの生活に望ましくない影響
を与える、「子どもの貧困」の実態についてお話いただきました。「子どもの貧困」が問題となる
のは、それが子どもの人生のさまざまな機会を奪うためです。たとえば、貧困状態におかれて
いる子どもたちは、友達と遊ぶ、習い事をする、塾に通う、学校に行くといった成長する過程で
経験すべき活動に参加することができません。

こうした貧困状態にある子どもたちの親は、養育怠慢というよりも、低収入の仕事をいくつもか
けもちするという生活に追われており、子どもに十分な関心を払うだけのゆとりを失っています。
また、不安定で逼迫した生活を送る親の姿は、子どもにさらなる不安を与える要因のひとつで
す。今日、親の力だけでは子どもを守りきれなくなっているといえます。ところが、給食費未納
問題などにみられるように、親の実態と周囲の認識のズレがあることも明らかになってきてい
ます。たとえば給食費の未納の問題は、「払わない親」の背後にある「なぜ払えないのか」とい
う点に目を向けて、制度として支えていくことが求められます。

親の経済的困窮と子どもの貧困という現象が一時的なものである場合には、それなりの対策
を立てることができます。しかし、貧困状態におかれた子どもが親世代になったときに貧困状
態に陥るという負の連鎖が固定化しつつあります。これが現在の「子どもの貧困」の特徴のひ
とつです。したがって、この課題を解決するためには、長期的、多角的な理解と対策が必要で
す。

具体的な対策案として、子どもの貧困率削減目標を法定化すること、いわゆるワーキングプア
を解消し雇用を安定化させて、労働環境を整備すること、給付付き税額控除を実施すること、
子どもの医療費を無料化すること、医療窓口での自己負担を軽減し、資格証明書を廃止する
こと、授業料以外の学校教育費を無償化することなどが紹介されました。

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