関西大学 人間健康学部

講演会・シンポジウム等Seminer

すこやか教養講座(第3期)の第5回を開催しました。

  • ■日時

11月12日(土)に、すこやか教養講座(第3期)の第5回を開催いたしました。

講 師:京都大学大学院人間・環境学研究科教授 川島 昭夫
テーマ:海を渡った椿

私たちが日本でもっともよく目にする椿は「ヤブツバキ」と呼ばれる品種で、冬から春に
かけて赤い美しい花を咲かせます。西洋では椿は「カメリア」と呼ばれ、特に貴族の間
ではみずからのステータスシンボルを示す貴重な花木として珍重されてきました。
太平洋岸に自生するこの椿は、どのようにして西洋に持ち込まれたのでしょうか。
今回のすこやか教養講座では、イギリスの歴史・文化史をご専門とする川島昭夫先生
をお招きし、椿の辿った軌跡とそこから見える社会の姿と歴史に迫りました。

椿はベトナム南部を原産地としています。その種は固い表皮に包まれていることから
海流に乗って東南アジア、中国、日本へと広がって行きました。この椿は17世紀末に
来日したケンペルというオランダ東インド会社の医師によってはじめて西洋に紹介さ
れました。西洋において椿は温室でのみ花を咲かせる花木として理解されていたため、
大変高価なものとして取引されました。

19世紀のイギリスは世界中に植民地を持つ「大英帝国」として繁栄を謳歌しました。
島国であり鉱物・植物資源に乏しいイギリスは、世界からさまざまな資源を自国に
持ち帰りました。その一方で、世界中に数多くの学者を派遣し、そこで得られた多くの
研究の成果を報告させています。もしかすると、そこには遥か彼方にある異邦の国の
姿やその国の文化を理解したいという「あこがれ」が介在していたのではないでしょうか。

情報革命の下、世界が「情報」を媒介として一元化・統合されようとしている現在。
私たちがこれから見ようとているものは、どこかで情報としてすでに見知ったものに
なりつつあります。こういう時代であるからこそ、自分たちが見たことがないものに
対する憧憬が、他者や他国を理解したいという異文化交流のモチベーションとなり
えるのではないでしょうか。

椿はインド洋を越えて西洋に到達した後、さらに大西洋を超え、ついには南洋の島
ジャマイカにまで到達しました。椿の辿った長く遠い旅路に思いを馳せながら、人びと
が椿に託した異文化交流への情熱を垣間見るこが出来ました。

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次回以降も充実した講師陣でお届けしますので、
ご期待ください。ひきつづきご応募お待ちしております。

すこやか教養講座(第3期)ご案内
http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_hw/2011/09/3.html