


街や建物の中には、デザイン的に美しい螺旋形のスロープを見かけることがあります。しかしそれらは意匠的に設計されたものが多く、障がい者にとって歩きやすいか、危険はないか、という調査はあまり行われてきませんでした。そこでわたしは、視覚に障がいがある人たちを対象に螺旋スロープを歩いてもらう実験を行い、彼らが空間をどう把握しているのかを研究しました。被験者は、視覚障がい者が10人と、健視者が11人。全員に白杖を渡し、健視者はアイマスク着用のうえ、一人ずつ螺旋スロープを歩いてもらいました。その様子をビデオと写真で撮影すると同時に、歩く人の後ろに記録者がつき、歩いた軌跡を克明に観察・記録。実験終了後にはヒアリングを行い、歩行時の手がかりや感じたこと、考えていたことなどを聞きました。実験の結果、個人差が大きいこともわかりましたが、驚かされたのは、アイマスクをつけた健視者は、手すりを頼りに道の端を歩く人がほとんどだったのに対し、視覚障がい者の中には、杖で床を叩きながら正確に道の真ん中を歩く人もいたことです。また視覚障がい者は、音はもちろん、陽射しの方向や風など、より多様な情報を使って空間を把握しようとしていました。一方、安全性の面から見て、スロープの設計には工夫の余地もあることがわかりました。実験を積み重ねれば、点字ブロックの設置場所や、手すりの形状などについての提案も可能になり、より良いまちづくりにもつながるのではないかと思っています。

建築学科
亀谷 義浩 准教授
視覚障がい者にある能力は、すべての人に本来備わっている能力であるはずです。中島さんの研究は、「視覚が奪われたとき、人はどんな能力を発揮できるのか」を知るという意味で、人間工学的にも価値があると思います。学生時代にこうした研究を通じて視覚障がい者の方々に出会い、その前向きな生き方に接したことも、今後の人生にとって一つの刺激となったのではないでしょうか。
※この学びのスタイルは2011年度のものです。


ベルリン・ユダヤ博物館は、上から見ると稲妻のような形をしています。そして、中に入ると迷宮のような、圧倒される空間があるそうです。この建築物そのものが「ユダヤ人の歴史、特にナチス・ドイツによって彼らが味わった恐怖」というコンセプトを表現しているのです。私たちの研究室では、20世紀から現在までのさまざまな建築作品を研究し、その成果を生かして、自分自身もコンセプトをもって制作に取り組みます。特に焦点を当てて学んでいるのが、建築物や街並みの「空間構成」。ユダヤ博物館でいえば、稲妻のような形を採用することです。なぜ空間構成が大事なのかというと、例えば「恐怖を表現するのに、もっとふさわしい空間構成はないだろうか。地下室はどうだろうか、宙づりになった空間は…」というように、設計した人のコンセプトがどれほどうまく作品に反映されているかを、空間構成で議論することができるからです。それは自らのコンセプトを作品上で実現するためにも、大変役立つプロセスだと思います。卒業制作の課題はコンセプトをもった空間を提案することで、私は「子供が自由に遊べる街」をコンセプトに、「木のシンプルな棚を基本ユニットとして、街中に子供の遊び場を点在させる」空間構成を作り、遊具や建築物の形を考えました。空間構成の段階で先生や他のメンバーと深く議論できたので、納得いくものができたと思います。

建築学科
末包 伸吾 教授
雲林院さんは短期間で空間構成の概念を理解し、作品で表現するまでに成長しました。地面の凹凸や水辺など、小さな場所を生かす空間作りは大変意欲的なものです。工学系ながら数式を全く使わず、哲学的な議論が多い異色の研究室ですが、彼をはじめ、建築を真剣に学びたい人が集まっています。
※この学びのスタイルは2010年度のものです。


地震が起きたときに建築物がどうなるか、ということをコンピュータを使って分析しています。まず、過去に起きた地震を「マグニチュード」「震源からの距離」「地盤の硬さ」「震源の深さ」という4つの基準によって分類。今回は、阪神大地震のような都市直下型地震によって木造の建物がどのくらい被害を受けるかを調べるため、そのようなタイプに該当する地震のサンプルをコンピュータの中で多数発生させて、建物にどの程度の被害が出るかをシミュレーションしていきました。解析結果からは、地震の揺れの大小だけでなく、「ゆっくり揺れるか、速く揺れるか」が、建物の被害に大いに影響するということが予測できました。これからは「こういう地震だと、こういう建物にこの程度の被害が起きるから、こういう対策が効率的」と数字で表せるように、研究を進めていきたいと考えています。いずれは「新築の建物をどういう風に立てると長く維持できるか」「木造の建物を長く維持するためには、どの箇所にどういうメンテナンスをするのが最善なのか」を考えるのにも、この研究成果が活用できると思います。意味のある結果が出るようにプログラムを組み立てるのはなかなか大変ですが「ああでもない、こうでもない」と考えながら進めていると、コンピュータ上の実験も、ものづくりの一つだと実感します。

建築学科
松田 敏 准教授
日本は地震大国。活発な地震環境にあって、これまでに、多くの地震被害を経験しています。日本で建物の構造を研究しようと思えば、地震の問題を避けては通れません。研究室では構造物の研究とともに、地震の性質の研究も行っています。統計的手法が有効な分野で、八木君は得意な数学を生かし、着実に研究を進めてくれています。
※この学びのスタイルは2009年度のものです。