沿革

沿革

1.商学部の創設と理念

 1886(明治19)年に、関西大学の前身である関西法律学校が創設された。同法律学校の創設から遅れること20年後の1906(明治39)年に、商都・大阪の要請に応えて大学科および専門科の中に商業学科が設置された。1922(大正11)年の大学令によって関西大学が発足した際、この商業学科は商学部に改組され、関西大学商学部が名実ともにスタートすることになった。その後、商学部は一時期、経済学部と改称され、その中に商業学科と経済学科とが置かれた時代もあったが、1948(昭和23)年に関西大学が新制大学に転換するや、法学部、文学部、経済学部とともに独立した一学部として再出発し、今日に至っている。関西大学商学部は学部を名乗ってから84年となるが、その前身である1906(明治39)年の商業学科の創設から数えれば、2006(平成18)年はちょうど100年目の節目の年となる。本年を商学部100周年とした所以である。

 商学部の成り立ちを振り返ってみると、そこには二つの思潮ないし理念を見出すことができる。一つは、名誉校員として関西法律学校の設立を支援した当時の大阪控訴院長・児島惟謙が司法権の独立を守るために権力の不当な司法介入を排除したことに象徴されるように、本学の創業に中心的役割を果たした人々が、明治の自由民権運動と係わりを持ち、自由民権や社会正義を国民のあいだに根付かせるために「高等教育」に情熱を傾けたことである。「正義を権力から護れ」との建学の精神は、本学の創設に携わった先達が掲げた高邁な理念であり、この精神は商業学科=商学部の中にも時代を超えて息づいてきた。

 いま一つは、教学の理念、あるいは学是とされる「学の実化」である。この考え方は、大学令に基づき大学に昇格した際に、総理事であった山岡順太郎が新大学建設の指導理念として打ち出したものである。山岡は1922(大正11)年に総理事に、翌年には学長に選出され、本学が大学として発展する礎を築いた人物の一人である。

 「学の実化」は、「学理と実際との調和」「国際的精神の涵養」「外国語学習の必要」「体育の奨励」の四つのスローガンからなっているが、山岡は「学の実化といふことは決して深遠なる真理を離れて、平凡なる学問をするといふことではないのであって、深遠なる真理を平易に説き、学理を実際に調和せしめたいといふに外ならない」と説いている。いずれにせよ、商都・大阪にあって、地域の要請に応える一方、学理の探求を行なうという考え方は、今日の大学に課せられている教育、研究、社会貢献という三位一体の課題に通じるものといえる。

 いうまでもなく、商学部は単に学生たちにビジネスに関する技術的な手法や実利的な知識を教えるところではない。その目指すところは、経済一般に関する基礎知識の上に、企業経営に関わる理論的・実際的な専門知識を授け、興亡と変転の激しい産業界等にあって十分に活躍できる人材を育成することにある。したがって商学部では流通、ファイナンス、国際ビジネス関係の各種科目を開設し、商品、資本、サービスに関する流通機構や取引形態を分析するとともに、世界の市場やその地域的発展に着目して外国地域経済の知識を教授し、流通、ファイナンス、国際ビジネスの総合的理解と国際的視野の拡大につとめている。さらに、他方において経営学および会計学関係の各種科目を開設し、企業経営の歴史、組織や管理などの複雑な経営現象を解明し、その数量的把握と有効な政策と手段の決定に関する知識をも伝授している。

 言うまでもなく、商学部の学部教育の内実は、一朝一夕にしてなったものではない。その時々の学部執行部や教授会メンバー、事務職員スタッフの絶えざる努力と尽力によるものである。

(井上昭一「商学部100年(1906-2006年)のあゆみ」 、関西大学商学部創設100周年記念誌『未来を切り拓く100年のあゆみ』より)

2.新世紀を迎えた商学部

 井上昭一「商学部100年(1906~2006年)のあゆみ」は、戦後商学部の歩みを次の5段階に分類している。

  • 学部再出発期(1948~1954年)
  • 学部生成期(1955~1960年)
  • 学部発展期(1961~1971年)
  • 学部成熟期(1972~1989年)
  • 学部刷新期(1990~2001年)
  • 学部新発展期(2002年~)

 ここで「刷新期」「新発展期」と名付けられていることからも明らかであるが、今日の商学部の特徴をなす教育プログラムの基礎は、その多くが1990年代以降に誕生している。

 まず、現在の商学部の5専修制は2008年のカリキュラム改革によって誕生したものだが、その前身である5コース(流通、ファイナンス、国際ビジネス、経営、会計)制が生まれたのは1990年のことだった。コース制や専修制は、「商学」という広大な学問領域のなかで、商学部生が自分の学習と研究の専門性を高めるために、専門科目を計画的に学ぶ手助けとなることを意図したものだが、そこでは当然、「幅広い教養を身につける」ことと「専門性を高める」こととの両立が問題となる。ゼミナールをどう位置づけるかという問題にも絡んで、副専攻の設置(2002年)など、これまでさまざまな試みがなされてきたが、それが現在の「5専修+特別プログラム」という形に落ち着いたのが2008年カリキュラムであり、その改訂版である2009年以降のカリキュラムである。

 また「品格ある柔軟なビジネスリーダーの育成」という学部の教育理念・目標が定められたのが1998年。これ以降、商学部はこの理念に沿った改革を着々と進めていった。セメスター制の導入(2002年)、第二部の募集停止と昼夜開講制の導入(2003年)、会計専門職大学院の開設(2006年)といった学部や大学をとりまく制度面での改革・変更を伴いながら、スタッフの充実と、よりきめ細やかな教育をめざして、創立100周年を迎えた商学部は、「改革の商学部」として、関西大学の先頭に立つ、さまざまな意欲的な試みを展開中である。文部科学省によって「英語に強いプロアクティブリーダーの育成」が「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」に、「プロセスイノベーター育成プログラムの開発」が「産学連携による実践型人材育成事業」にそれぞれ採択されたこと(2008年)は、そうした試みが学外からも高く評価されていることの証しに他ならない。

 品格ある柔軟なビジネスリーダーの育成をめざして、商学部はいま、その第2世紀の第一歩をあゆみはじめたところである。

年表

戦前

1886年 11月 関西法律学校 開校
1901年 7月 私立関西法律学校と改称
1903年 1月 専門学校令による専門学校として認可
1904年 8月 本科に経済学科を増設
1904年 8月 社団法人私立関西大学に改組・改称
1906年 9月 大学科および専門科に商業学科を増設
1909年   商業学科第1期生が卒業
1911年 4月 専門部に高等商業予科を新設、商業学科を高等商業学科と改称
1918年 2月 大学部で商業学科に再度改称。専門部では名称変更なし(但し、1924年4月以降は改称、後に1940年4月に再度高等商業学科に改称)
1920年 3月 財団法人関西大学に改組・改称
1922年 5月 千里山学舎(大学予科校舎)竣工
1922年 6月 大学令により関西大学として認可。商学部(商業学科)設置
1924年 4月 商学部に経済学科を増設
1924年 8月 商学部を経済学部と改称
1929年 4月 天六学舎竣工
1930年 4月 専門部第1部(昼間部)を設置。専門部第1部と第2部、ともに商業学科設置
1935年 3月 経済学部を経商学部(経済学科・商業学科)と改称
1945年 1月 経商学部を経済学部と改称、商業科を廃止

戦後

1948年 4月 学制改革により新制大学に移行。商学部(1・2部)設置
1950年 4月 (新制)大学院経済学研究科設置(法学研究科、文学研究科とともに)
1953年 2月 経商学舎増築
1953年 4月 第2部(夜間部)を千里山学舎から天六学舎に移転
1958年 4月 経済・政治研究所 開設
1962年 4月 大学院に商学研究科・商学専攻(修士課程と博士課程)を増設
1974年 3月 大学院学舎(岩崎記念館)竣工
1975年 4月 大学院商学研究科に会計学専攻を増設
1983年 1月 「外国人学部留学生入学試験」を初実施
1984年 1月 「大学院外国人留学生入学試験」を初実施
1985年 4月 総合図書館・情報処理センター開館
1986年 11月 関西大学創立100周年記念式典を挙行
1990年 4月 商学部にコース制導入(流通、ファイナンス、国際ビジネス、経営、会計の5コース)
1993年 1月 第2部が初の社会人入学試験を実施
1994年 4月 第2部が天六学舎から千里山学舎に移転
1998年 6月 学部の教育目標に「品格ある柔軟なビジネスリーダーの育成」を設定
2002年 4月 セメスター制(春学期、秋学期)導入
2003年 4月 昼夜開講制導入(フレックスコース新設) 第1部と第2部の区別廃止
2006年 4月 会計専門職大学院 開設
2006年 5月 商学部創設100周年記念式典を挙行
2006年 6月 第1回KUBIC(関西大学ビジネスプランコンぺティション)本選会開催
2007年 4月 フレックスコース 新規募集停止
2008年 4月 商学部に専修制導入(流通、ファイナンス、国際ビジネス、マネジメント、会計の5専修)
2008年 8月 「海外ビジネス英語プログラム」開始
2008年 9月 文部科学省「平成20年度産学連携による実践型人材育成事業-サービス・イノベーション人材育成-」に商学部「プロセスイノベーター育成プログラムの開発」が採択
2008年 9月 文部科学省の平成20年度「質の高い大学教育推進プログラム」(教育GP)に商学部「英語に強いプロアクティブ・リーダーの育成」が採択
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