カリキュラム

教員エッセイ

第19回不透明な時代に

商学部教授  鶴田 廣巳(ファイナンス専修)

 100年に1度といわれる世界的な金融・経済危機が押し寄せている。経済不況がこの先、いったいどこまで深刻化するのか、いつになれば事態が好転するのか、誰にもわからない。つい先日までは「いざなぎ景気」を上回る戦後最長の「好景気」が続いていると喧伝されていた。長期にわたり「氷河期」「超氷河期」などと形容されてきた新卒学生の就職状況にもやっと回復の兆しが見えたかに思われた矢先である。学生諸君は将来に大きな不安を感じていることだろう。

 21世紀にはいり、世界はますます先行きの不透明な時代に遭遇している。非正規雇用の増加や正社員の雇用調整など雇用の面での不安定性の増大は、社会の安定を脅かしている。このことは、学生諸君にとっても他人事ではなくなっている。若い世代の人々が将来に対する展望を描きにくくなっていることは、この国の不幸である。内閣府が定期的に行っている「世論調査」によれば、これから先の生活について「悪くなっていく」と答えた者の比率はますます増大しているのである。

 しかし、こういう厳しい時代であるからこそ余計に、学生諸君には大学でじっくりと将来を見据えた知的蓄積を心がけてほしいと思う。就職のためのノウハウではなく、人間のもつ基本的資質である考える力、論理的な能力、適確な判断力などを磨くとともに、ぜひとも社会で生きていくうえでの哲学を身につけてほしい。
そうして身につけた力は、社会に出てからたとえどのような環境になろうとも、それに柔軟に、また適切に対応することを可能にするはずである。

将来に夢と希望を持てる社会を築くため、学生諸君にみずみずしい批判精神を培ってほしいと切に願っている。

『葦 №142号』より

2010年04月22日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

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