カリキュラム

教員エッセイ

第15回教育の基本

商学部教授  加藤 義忠(流通専修)

 私が関西大学に職をえて、研究・教育に携わるようになってから今年で38年目になるが、この間に私の教育観もずいぶん変わってきた。

 助手期間の3年を経て専任講師になり講義やゼミナールを担当するようになった当初は、若かったこともあるのだろうが、一方的に知識を教え込み、試験の採点なども厳しくし、また学生に厳格な態度で接するのが優れた教育者だと思い込んでいた。当然のことながら、受講生の多くは不合格となるわけだから、学生からはまるで鬼か悪魔の化身のように思われているという噂も耳に挟む有様だった。

 厳しい教師という学生の評価が定まり広まるにつれて、自然の成り行きとして講義の受講生やゼミナールの志望者が激減し、学生が私を敬遠する羽目におちいったのである。このような状況が生じるなか、これまでの教育のやり方で本当にいいのだろうかといった疑問がふつふつとわいてきた。

 思案の挙句、ほめることを原則とする教育を試したところ、学生は実にのびやかに自律的に勉学するようになり、予想外に良い教育効果を生んだのである。それ以降今日にいたるまで、ほめ励まし、学生を萎縮させないことを宗に教育している。学生が知力や判断力を養い自ら育ち内発的に成長していく力をつける手助けをするのが教育の基本であるといってよいが、私が試行錯誤のなかから学んだ教訓は、そのために自由で暖かな環境作りが大切であるということである。自由で暖かな雰囲気のなかで教育していると、時には学生の本音が聞けたり、逆に教育の方法などに関して学生から教えられたりすることもある。

 少子化時代ゆえに、親たちは子どもに過大な期待をかけるのだろうが、もっとゆとりを持ってのびやかに接してほしいと念じている。

『葦 №139号』より(一部加筆修正)

2009年09月14日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

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