カリキュラム

教員エッセイ

第9回「時給1ユーロ」と「1000ユーロ世代」の時代に

商学部准教授  徳永 昌弘(国際ビジネス専修)

 「時給1ユーロ」(ドイツ)と「1000ユーロ世代」(イタリア)。

 先進国でありながら深刻な失業問題を抱える両国で、最近登場した言葉である。

 前者は、2005年初めにドイツ政府が失業対策の一環として導入した時給1~2ユーロ(約160~320円)の超低賃金労働を指す。ただし、あわせて失業手当も支給されるため、週3~5日の労働で月収は700ユーロ(約11万2千円)程度になる(朝日新聞2005年9月16日)。

 後者は、2006年半ばに小説「1000ユーロ世代」の出版を機に、イタリアで急速に広まった用語である。文字通り月収1000ユーロ(約16万円)前後の収入ながらフルタイムで働く人々が、同国で急増しているという(同2006年8月8日)。

 ここまで書くと気づかれる方も多いと思うが、こうした低収入で働いているのは主に20~30歳代の若年層である(日本を含め、先進国では若年層の失業率が一番高い)。大学を卒業して専門知識を活かした仕事に就きながら、日本の大卒初任給約20万3千円(2005年)を大きく下回る収入で何年も働いているわけである。世界的にみると15~24歳の年齢層の失業者数は2005年に過去最大を記録し、計算上は744人に1人が職探しをしている(共同通信2006年10月30日)。

 個人的な経験でいえば、ロンドンで20歳前後の女性に街角で小銭をねだられ驚いたことがあり、モスクワの地下街では「学位あります」という紙を掲げてじっとたたずむ男女の姿を何度か目にした。そして、大阪では「就活は人生の岐路です」と言って大企業からの内定を喜ぶ学生に「本当の岐路はこれからだと思うけど」と心の中で水をさしながら、若者受難の時代を生き抜く術は果たして何だろうかと考えた。

『葦 №135号』より(一部加筆修正)

2008年10月07日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

 

☆モスクワの地下鉄の駅構内☆

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