カリキュラム

教員エッセイ

第4回学生街

商学部教授  杉本 貴志(流通専修)

 1980年代、関西圏や首都圏ではキャンパスの郊外移転が進み、多くの大学の学生は、それまでとは一変した学生生活を送ることとなった。大学の周囲に学生向けの店が立ち並び、学生たちが喫茶店、飲み屋、雀荘等々の誘惑に悩まされながら登校するという独特の風景が、各大学から次々に失われていったのである。

 もちろん、充実した施設や自然環境に恵まれ、さまざまな「誘惑」とは無縁の郊外キャンパス型学生生活にも多くのメリットがあることは言うまでもないけれども、各大学を取り囲んで成立していた伝統ある学生街がなくなってしまったことを残念に思う同窓生も多いだろう。「学生街があってこその学生時代だった」と回想される方々も少なくないはずである。

 そんななかで、われらが千里山キャンパスは、昔ながらの学生街が残っている関西では稀有な存在だと言われる。関大前通りとも称される、駅に至るまでの商店街は、関西随一の学生街であるとメディアでたびたび紹介される。学生諸君にとっても、われわれ教員にとっても、それは喜ばしいことであるはずなのだが、どうも最近、喜んでばかりもいられないような現象を目にすることが多くなってきた。

 人経営の店が激減し、チェーン店ばかりが残った商店街では、学生と店や地域の人との交流がほとんどないどころか、路上に座り込んだり、泥酔して暴れたり、再三違法駐車をしたりで、地域に多大な迷惑をかける関大生すら残念ながら存在する。卒業したOBが、学生時代のお礼を兼ねて、かつて世話になった店を卒業後も時折訪れるというのが自分の理解する学生街の「正しい」姿なのだが、そういうことも関大前では滅多にないのだという。

 実に、実に、寂しいことである。

『葦 №133号』より

2008年01月25日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

 

☆現在の関大前通りの風景<2008年1月18日朝撮影>☆

阪急千里線沿いの道から関西大学正門方向(西側)へ曲がった周辺


上の写真からもう少し歩いて・・・関西大学正門前周辺

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