


触媒化学は、現在非常に注目されている分野です。このことは、2001年以降ノーベル化学賞を受賞した25人のうち、9人が触媒化学で受賞していることでもわかります。日本の研究レベルも高く、世界の研究者と競い合うことができる点は、大きな魅力です。しかし、イリジウム、パラジウムなど、従来から触媒として利用されてきたレアメタルは、すでに多くの用途が開発され、価格も高騰しています。これからは、より容易に入手できる代替金属を活用して、従来の合成プロセスでは困難だった化合物を効率的に合成する反応の開発が求められています。わたしは触媒としては未知の「ニオブ(元素番号41番)」を用い、耐熱性高分子の原料としても期待される「1,3-シクロヘキサジエン」を合成する研究を行っています。条件を変えながら実験するうちに、高効率であるばかりでなく、「ムダな副生成物を出さない」という意味で環境調和型な反応を創り出せることがわかってきました。この研究成果をまとめてハワイの国際学会に参加し、ポスター掲示した際には、これまでにない研究例として世界中の研究者から注目してもらえ、とてもうれしい気持ちになりました。今後もグリーンケミストリーの一端を担うような研究を続けたいと考えています。将来的には、ニオブ自身の特性を生かしたオリジナルな反応の開発に挑みたいですね。

化学・物質工学科
大洞 康嗣 准教授
実験のなかで独自の工夫をしながら、今までに例のない研究を進めていくことは、決してやさしいことではありません。なぜなら、そういう研究を行うには、過去の研究データに基づく知見、並びに教員のアドバイスに単にしたがうだけでは達成できないからです。新しい研究に果敢に挑戦している佐藤さんは、豊富な化学や物質への知識を生かして、多面的なものの見方ができる点が持ち味。今後の活躍に期待しています。
※この学びのスタイルは2011年度のものです。


青銅の中に直径約5μmの金属硫化物粒子が分散したビワライト
水道管は、製造時の加工を容易にするため、従来は鉛を含んだ青銅合金が用いられることが一般的でした。しかし鉛は人の健康や環境によくない影響を与えることから、近年は世界的に規制が強化され、産業界でも鉛を含まない銅合金の開発が進んでいます。その中で、関西大学が産官学連携によって開発した鉛フリー合金が「ビワライト」です。このような新規材料にとって、「腐食」は大きな問題点。実際の環境で使用できるかどうかを判断するために、耐食性の調査は大変重要です。実験では硫酸イオンなどを含んだ水溶液に入れたビワライトに電圧をかけます。材料の腐食の難易度は、水溶液の濃度と電圧を変化させることで確認できるので、材料に腐食が起こらない環境条件を知ることができます。これまでの調査によって、ビワライトは通常の水道水用配管として問題なく使用できることがわかりました。しかし、環境によっては耐食性が低下することもあるので、破損などの事故を防ぐためには、使用可能な環境に関する適切な判断とルール作りが必要だと思います。大学4年次からこの新しい金属材料の腐食の研究を続けてきましたが、今回調査しているビワライトのデータには前例がないので、新しいことに挑戦しているという手ごたえがあります。とくに、予測どおりの結果が出て自分の考え方が正しいとわかったときには大きな充実感を感じます。

化学・物質工学科
春名 匠 准教授
金属材料が「ある環境では使えない」「この環境で使うには適切な処理が必要」などと判定できれば、単に事故を防げるだけでなく、コストダウンや汚染防止にもつながります。そういう意味で、腐食研究は社会的ニーズに密着した分野だといえます。学生は毎日の地道な研究を通じ、未知の課題にも柔軟に対応し解決する力を養っており、卒業後は幅広い産業分野で活躍しています。
※この学びのスタイルは2010年度のものです。


エビやカニの甲羅などに含まれている天然素材キチン。このキチンは、人間が体内に摂取しても害がなく、ヒトの酵素で分解される性質を持っています。私たちは、そうしたキチンの特性を医療分野で活用するため、キチンを塩化カルシウムで溶かす方法を発見。フィルム状や糸状など、用途に合わせてさまざまな形体が形成できるゲル状のキチンを生成することに成功しました。最終工程で塩化カルシウムを除去すれば、人体にやさしい「バイオマテリアル」として人工硬膜や人工アキレス腱の素材に、また、軟骨の再生を促す素材になり得ると判断し、現在は実用化に向けた最終審査を依頼しているところです。このキチン由来の素材は、医療分野はもちろん、産業分野をはじめ、さまざまな分野で活用できる優れた素材になり得ると確信しています。私は以前、繊維加工会社に就職していたのですが、環境との共生が叫ばれる現在において、こうした天然高分子に関する研究はますます重要視されると考え、再びこの研究室に戻ってきました。今の夢は、ここで培った研究技術や知識をもとに、再び企業に戻って、人体にやさしく、環境にもやさしい、エコフレンドリーなものづくりを進めていくこと。化学に携わる者として、これからも後世に繋がるような研究をしていきたいと思っています。

化学・物質工学科
田村 裕 教授
地球におけるキチンの年間生産量は、繊維や紙などの原料となるセルロースとほぼ同量と言われ、石油に代わる天然資源になり得るとして注目を集めています。長濱君は、この研究における大きな戦力。在籍中に、実用化に向け大きく進展することを期待しています。
※この学びのスタイルは2008年度のものです。